ところで、私は全国のクリニックを回りながら、さまざまな研究会や学会に参加しています。今回は、私が参加した「第109回 日本美容外科学会」の様子をご紹介します。
国内の美容医療の学会は、いくつかに分かれています。大きくは私が所属している「日本美容外科学会(JSAS)」と、「一般社団法人 日本美容外科学会(JSAPS)」の2つで、開業医か勤務医かの違いはありますが、それぞれ医師として常に学ぶ姿勢を大切にしていることに変わりはありません。昨年はコロナ下で中止になり、1年ぶりの開催となりました。私は、3年前にも同学会で眼瞼部の座長を務めました。その時の演題を再度聞きたいという各先生方からのリクエストに応えての、今回の登壇でした。
まず、「眼瞼下垂手術のひと工夫」という演題で、前回の「Part2」として動画を交えて講演しました。眼瞼下垂の治療には手術が必要で、@挙筋腱膜タッキング法、A挙筋腱膜前転術、B挙筋短縮術、Cミュラー筋タッキング法、D前頭筋吊り上げ術などがあります。私は、さまざまなメディアでもご紹介していますが、当院で行っている「ミュラー筋タッキング法」は、私が開発したオリジナルの手術方法で、少しずつ改良を加えながら完成させたものです。ミュラー筋タッキング法は、皮膚の重瞼ライン上を切開後、眼瞼挙筋を切除せずにミュラー筋のみを短縮する方法で、術後の腫れを最小限に抑えることが可能です。この新しい方法と改良は、眼瞼下垂の手術を年間約300件以上、累計で10,000件以上の症例を持つ当院だからできたといえます。3年前の学会では、手術中の動画を見た医師から「手際がよくて早すぎる。なにをどうやっているのか分からない。もう一度見たい、説明を聞きたい」との要望が多かったことで今回、再度の発表になったのですが、終了後は前回以上の質問を受けることになりました。今も全国には私の「教え子」といえる医師が多くいますが、学会に新しく参加してきた医師が私の術式に興味を持ってくれるのはうれしいことです。
今回は、もうひとつ、とても珍しい内容を発表しました。「真皮脂肪を用いた亀頭増大」というタイトルでペニス増大術をご紹介したのですが、「美容医療は女性」というイメージが医師にも強くあるため男性患者向けの講演は、15年ぶりだったそうです。
亀頭増大の手術は、現在、ヒアルロン酸などの注入剤や脂肪注入がほとんどです。しかし、それらは時間の経過とともに体内に吸収されるため、元に戻ってしまいます。私は、20年前から脂肪欠損による皮膚陥凹に対する治療に使っていた真皮移植、真皮脂肪移植をヒントに、亀頭増大に応用できないかと考えました。そこで完成させたのが、真皮脂肪を用いた亀頭増大術です。腹部の皮膚を2cm程度切除し、さらにその皮膚の表皮のみを除去して真皮と皮下脂肪を残します。亀頭部を数ミリ切開してポケットを作り、そこに真皮と皮下脂肪を可能な限り挿入して切開部分を縫合します。縫合には吸収糸を使うので抜糸は必要ありません。挿入した脂肪の残存率は80〜90%、性交渉は1カ月以降で可能になります。
この発表を行った後、会場に面白い現象が起きました。誰もが初めて聞く術式だったため、何から質問してよいか分からないという状態になったのです。美容医療に挑戦する女性医師が多くなり、参加者の3分の1が女性だったことも関係していたかもしれませんが、質問は「海綿体に、はさみを入れるのですか?」と、かろうじて尋ねてこられた医師のみ。ざわざわしている会場の様子を、私や当院のスタッフだけが少し誇らしく感じながら見ていました。
各界の専門医や製薬会社の担当者の話しを聞きながらのランチョンセミナーも学会の楽しみです。ボトックスやヒアルロン酸なども日々、改良され、患者さまにより安全で確かなものであるよう研究されています。今回は、当院から3人のスタッフと私とで参加し、最新の機器や薬剤のことなども知る機会となりました。
学会は、年に1度の医師の祭典のようなものです。今年、無事に開催され、また、私の技術を多くの医師に伝えることができたことは、とても良かったと思います。これからも最新の技術と柔軟なアイデアで、美容医療の最前線を歩んでいきます。