2007年08月14日

人工乳腺の歴史を振り返る

前回、究極の人工乳腺として
ニューアナトミカル型コヒーシブシリコンバッグを紹介しました。
今回はここに至るまでの人工乳腺の歴史を振り返ってみましょう。

人工乳腺としてまず最初に登場したのは
「シリコンジェルバッグ」と呼ばれるものです。
これはすでに30年前から存在していました。

Fig_10

しかし1992年に、日本の厚生労働省にあたる
アメリカ食品医薬品管理局(FDA)が
その使用を全面的に禁止します。
バッグからシリコンジェルが漏出すると
発ガン性を誘発する危険性があったからです。
すでに日本では製造されなくなっていますが
国内では乳ガンの乳房再建での使用が認められているため
現在でも使われるケースがあります。
しかし私の個人的な見解を申し上げれば
今は他にもっと安全な方法があるので
シリコンジェルバッグを使うのは避けるべきだと思います。

次に登場したのは「生理食塩水バッグ」です。
これは、点滴などに使用される生理食塩水を
ポリウレタン製のバッグに注入したものです。
FDAがシリコンジェルバッグを全面禁止にした
1992年頃から利用が始まりました。

Fig_11

(左はスムースタイプ、右はテクスチャードタイプ)

当初は国内で製造しているメーカーがなく
製造メーカーが存在する米国からも直輸入できなかったため
サイパンなどを経由して輸入するケースが多かったようですが
その後日本でも正規ルートで取り扱われるようになりました。
しかし感触などの面で物足りなさがある上
時間の経過と共にバルブ部分から内容物が漏れ出してしまうため
いずれは入れ替えなければならないという欠点がありました。

内容物は生理食塩水なので安全性の問題はありません。
そのため現在でも、米国ではほぼ100%、
整形美容が盛んな韓国でも90%が
生理食塩水バッグを使用しています。
しかし日本では、現在あまり使われていません。

より自然な形を求めて次に登場したのが
「ハイドロジェルバッグ」です。
これは「ムコ多糖類」という、
砂糖やでんぷん質に近い成分で構成されています。

Fig_12

実はこのハイドロジェルバッグは、2002年に
イギリスで使用禁止となりました。
日本でも現在は使われていないはずです。
安全性の面で、非常に大きなリスクがあるからです。

ムコ多糖類は栄養成分でもあるため、
ここにバクテリアなどが入り込むと繁殖を始めます。
これが血管に入り込むと「菌血症」となり
さらに動脈に細菌が入り込むと
「敗血症性ショック」から「腎不全」を発症します。
その結果死に至る危険性もあるのです。

もちろん体内でバクテリアなどが繁殖しても
普通なら抗生物質で抑えることが可能です。
しかし人工乳腺を入れると、人体の異物反応によって
人工乳腺のまわりに被膜が構成されます。
この被膜の内側でバクテリアなどの繁殖が起こると
抗生物質がまったく効きません。
実はこれが、ハイドロジェルバッグの恐ろしさなのです。

私はこの危険性を日本で初めて指摘したのですが
当時は多くのドクターに「小室さん、何言っているんですか」と
ほとんど相手にもされませんでした。
しかし現在では、ほとんどのドクターが
ハイドロジェルバッグの危険性を認識されているようです。
もちろん当院でも、安全性の問題から、
ハイドロジェルバッグは採用しておりません。

そして最後に登場したのが「コヒーシブシリコンバッグ」です。
米国マックガン社が実用化し、2000年に日本に紹介しました。
そしてコムロ美容外科が独占で2年間、
日本で初めてこのバッグを採用したのです。
現在では、国内で使用される人工乳腺のうち
8割以上がコヒーシブシリコンバッグです。

コヒーシブシリコンバッグは、
安全性、感触、耐久性など、あらゆる面で優れており
今後まちがいなく人工乳腺の主流になると確信しました。
ただ使っていくうちに、デザインに
不満を感じるようにもなったのです。
もっと日本人の体型に合った、自然なフォルムにしたい。
そう思って私は2002年に、マックガン社に対して
デザイン面での改良を申し出ました。
しかし最初、この提案は断られてしまいます。

その一方でこの頃、フランスのユーロシリコンからも
コヒーシブシリコンバッグの営業がやってきます。
このとき私は、デザインをやらせてもらうことを前提に
契約のサインをします。
そして実際にフランスに飛び、アナトミカルなデザインを行い
製品化してもらうことに成功するのです。
これは「クリスタリン・パラジェル・コムロ」として
発売されました。

下に示すのが、このときの販促資料です。
上からDVD、ユーロシリコン社のパンフレット(表紙)、
そしてこのパンフレットに掲載された
「クリスタリン・パラジェル・コムロ」の紹介です。

Fig_13

Fig_14

Fig_15

この製品は当院でも2003年から使用を開始し、
年間1500件以上の施術で利用されました。

「クリスタリン・パラジェル・コムロ」の成功が契機となり、
マックガン社からもデザインを依頼されるようになりました。
その結果、2004年に生まれたのが、前回ご紹介した
全世界で「McGhan KOMURO」として販売されている
「コムロコヒーシブシリコン」なのです。

Fig_16

コムロコヒーシブシリコンがどれだけ優れているかは
他の人工乳腺と比較すれば一目瞭然です。

Fig_17

この表でもおわかりいただけるように、
あらゆる面で他の人工乳腺よりも優れています。
2004年に米国ヒューストンや韓国で行われた
「国際美容外科学会」や「韓国大韓形成外科学会」の
『第1回バスト形成研究会創立総会』でも
高い評価をいただきました。
なおマックガン社のコヒーシブシリコンバッグは
2006年11月に、FDAによって認可されています。
つまり安全性の高さも公に認められているのです。

コムロコヒーシブシリコンが登場したことで
豊胸術はひとつの完成形に至ったのではないか。
自画自賛のように聞こえるかもしれませんが
私はこのように感じています。

posted by コムロ美容外科 at 16:00 | バスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする