2009年07月14日

性同一性障害〜ホルモン療法

 

前回に引き続き、性同一性障害についてのお話です。今回はホルモン療法を紹介します。

 ホルモン療法とは、身体的性別とは反対の性ホルモンを投与することで、二次性徴の一部を性自認に一致させようとするものです。身体的性別が完全に変わっ てしまうわけではありませんが、その特徴は緩和されていきます。これによって身体的性別に対する違和感を改善し、葛藤を少なくする効果があります。

 投与するホルモンは、MTFに対しては女性ホルモン(卵胞ホルモンや黄体ホルモンなど)、FTMに対しては男性ホルモン(テストステロン)です。

  これらのホルモンを投与する場合には、必ず定期的に血液を採取して、性ホルモンの血中濃度をチェックする必要があります。これによってホルモン投与の効果 を監視・評価するのです。ただしホルモン療法における血液検査は、治療目的の検査の場合でも健康保険が適用されないので注意が必要です。

  投与方法は、注射剤、パッチ剤、経口剤の3種類があります。日本では注射剤を使用するのが一般的なのですが、これは注射剤が最も副作用が少ないからです。 注射の方法としては筋肉注射を採用することが多いのですが、うまく注射しないと神経に触って激痛が走ったり、注射した箇所にしこりがのこったりします。し かしきちんとコツをつかんだドクターが注射をすれば、このようなことはありません。まったく痛みを感じないだけではなく、注射後の処置を適切に行うこと で、しこりも防ぐことができます。

 ホルモン療法の副作用として最も頻繁に見られるのは肝機能障害ですが、その危険性が最も高いのが経口 剤です。ホルモン剤をインターネットで注文して服用している方もいらっしゃるようですが、この場合には知らず知らずのうちに肝機能障害に陥ることがありま す。これも重要な注意点です。

 それでは実際にホルモン療法を行うと、どのような効果が得られるのでしょうか。効果を箇条書きにすると、以下のようになります。

A.MFT(女性ホルモン療法)の場合
1.乳房や乳腺が大きくなります。
2.髭や体毛が少なくなります。
3.頭髪が増え、禿の予防になります。
4.筋肉の減少により、丸みをおびた女性的な体型になります。
5.精巣の機能低下に伴い、勃起不全が起こることがあります。

B.FTM(男性ホルモン療法)の場合
1.変声し、声が低くなります。
2.多毛になります。
3.陰核の肥大が起こります。
4.性欲の亢進があります。
5.生理が止まります。
6.筋肉が発達し、男性的な体型になることがあります。

 ホルモン療法の効果には個人差がありますが、通常は開始後数ヶ月で変化が現れます。

  女性ホルモン療法の場合、まず皮下脂肪が増大し、次に体毛や頭髪など皮膚の変化が現れ、精巣の機能が低下していくのが一般的です。これらの効果が現れる前 に抑鬱気味になり、イライラしたり鬱状態になることもありますが、治療開始から1ヶ月くらいで抑鬱状態が収まり、効果が現れ始めます。さらに治療から1年 程度が経過すると、乳房の発達が見られるようになります。これらの効果の一部は可逆性のものなので、治療を中断すると元に戻っていきますが、髭や乳房の変 化を元に戻すのは困難が伴います。また精巣の機能低下は、数ヶ月以上投与を続けるとほぼ不可逆となり、元に戻らなくなります。

 男性ホル モン療法の場合は、変声と陰核肥大、性欲の亢進が同時に進み、その後2〜3ヶ月経過してから体毛が増加、生理が止まるといった効果が現れます。治療開始か ら1〜2ヶ月程度で中止すれば元に戻りますが、体毛や生理への影響が進むと元に戻すことが難しくなります。また変声が進んでいくと声帯の厚みが増していく ため、元に戻せなくなくなります。

 このようにホルモン療法は効果が現れるまでに時間がかかり、投与をやめるタイミングが早ければ元に戻るという特徴があります。そのため身体的性別を変えるという決意が十分でない場合や、身体的性別の変化に伴う社会生活への不安などがある場合に適しています。

 これとは逆に、身体的性別を変えることを決意している方や、早く効果を得たい方には、必ずしも向いていません。そのような方は性別適合手術が適しています。

 次回はこの性別適合手術についてお話しします。

posted by コムロ美容外科 at 18:10 | 性同一性障害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする